「犬の口腔ケア大全」を受講しました

2107年2月21日、CACIOコンパニオンアニマルケア国際機構 特別講座
「犬の口腔ケア大全」を受講してきました。
講師はおなじみ、とだ動物病院の戸田功先生です。

私も犬の歯磨きやオーラルヘルスケアの啓発活動をするようになって幾年か経ちました。
私自身がセミナーの講師をすることもあるのですが、
「それなのに?」ではなく、「それだから」、信頼のできる新しい情報を常に取り入れていくことはとても大切だと思っています。

戸田先生の講演はいつも大人気だそうです。
私もペット栄養学会やJBVPなどで何度も拝見していますから、その人気には心から納得です。
定員になってしまっては困るのでかなり早くから申し込んで、この日を楽しみにしていました。

会場は渋谷にある専門学校ビジョナリーアーツ。
駅前が工事をしているせいで、いつ行っても何度行っても迷う渋谷です。
動物看護士認定試験の日にも迷いまくったイヤ~な思い出があるのですが、
今回はリベンジ!もう迷わない!!

…のつもりだったのですが、快適さを求めてJRではなく地下鉄で行ったのが失敗。
最寄りの出口から出られず、駅前工事のラビリンスにはまり、
頼みの綱のグーグルマップはグルグルマップ。

蓮「まさかまた迷っ…」

迷ってなどいない!遠回りをしただけだ!

…で、ようやく辿り着いた専門学校ビジョナリーアーツ。
暑さを避けてわざわざ地下鉄で行ったのに、余分に歩き回ったせいで結局汗をかきまくりです。
しかもここは…

学校!?

なんとトロピカルな…。
で、エレベーターに乗って目的階で降りると、そこはいきなり会場内で
薄暗い会場に人がたくさん集まり、プロジェクターで何かが投影されているではありませんか!?

どうも違う階に着いてしまったようです(-_-;)
またしても汗をかきました。

ようやく会場に着くと、もうすでに席はかなり埋まっていました。
定員は50人となっていましたが、もっといたのではないでしょうか。
さすが人気の講座。早めに申し込んでいて良かったです。

戸田先生に会釈をして席へ。
受講者の内訳は、獣医師・歯科医師(は私だけのようでしたが)が数名、次いで動物看護師、トリマー、その他ペット関連業といった具合でした。

以前にこのブログでも書いたようにトリマーによるデンタルケアや無麻酔歯石除去のことが懸案にあるのですが、
(→歯磨きと指導は誰がする?~第25回日本小動物歯科研究会症例検討会より~
トリマーの受講者が結構いることで、戸田先生も「トリマーの皆さんに言いたいことがあるんです」とおっしゃっていました。

講演のメインテーマは「間違えやすい口腔ケア」。
内容は
歯周病とは(歯周病の病態)、治療、症例、デンタルケア用品について、デンタルケアの方法など。
講演の合間時間で戸田先生に「先生が聞いてもつまらないのでは?」と言われましたが、

「ファンですので♡」

と即答(笑)
ジョークではなく、戸田先生の軽妙なお話はとても楽しいのです。
それに、専門は専門。
属している専門分野によって入ってくる情報の量・質・入手しやすさには違いがあります。
私は人間の歯科の専門ですので、人間の歯科の情報については最新の情報をいくらでも仕入れることができます。
しかし「動物の」歯科となるとそうは行きません。
やはり動物歯科を行っている獣医師の先生から聞くのが一番です。
「歯科」という共通の分野の中で、人間と動物の違いを知るのも私が感じている面白さの一つです。

講演中に戸田先生がいらして
「人間だったら歯周病の診断ではまず何をしますか?」
と話題を振られました。
もちろんプロービング(歯周ポケットの深さを測ること)やエックス線撮影を行います。
しかし動物ではプロービングもエックス線撮影も無麻酔で行うのは難しいので麻酔下で行います。
そうした違いは些細なことですが「人にできて動物にはできないこと」、
つまり動物の医療を考えるにあたり基本となる概念となるので重要であり、面白いのです。

たとえば無麻酔歯石除去の問題点や危険性はもうかなり知られるようになり、
私もこのブログで(まだ途中ですが)継続して発信を続けていますし、
今回の戸田先生の講義中でも力を入れて言及されていました。

「麻酔は体に悪いもの・危険なもの」という印象を持っている人は少なくないと思います。
(→序章 無麻酔歯石除去という言葉が与えるイメージ
確かに麻酔の事故で死亡したり後遺症が出ることも中にはあります。
しかしそれは全麻酔症例の中でどれだけの割合でしょうか。
患者の年齢・体格・体力・疾患や怪我・全身状態などで麻酔の影響も変わります。
それを一律に「危険である」と語るのはおかしなことです。
これは、人にも動物にも等しく言えることです。

では治療の際の麻酔を考えてみましょう。
自分が歯科の治療を受けるとき、麻酔は危険だから無麻酔で行って欲しいと思いますか。
できれば麻酔の注射すら全く痛くないようにして欲しいと願うのではないでしょうか。
眠っている間にすべて済んでくれたらいいのにと思ったことはありませんか。
「怖いから全身麻酔でして欲しい」
という、半分本気で半分冗談の声もよく聞くほどです。
スケーリング(歯石取り)も実はちょっと痛いときがありますよね。
歯周病で歯肉の状態が良くなければ、さらに痛みます。
超音波スケーラーの「キーン」という音や冷たい水、
ハンドスケーラーでこするガリガリという音や歯を引っ張られる感覚もなかなか嫌なものです。
それなのに犬猫の歯石除去では「麻酔は怖いから無麻酔で」となるのは妙な話です。
「この怖い思いや痛みをなぜ耐えなければいけないか」と考えて納得して受け入れることのできない犬猫こそ、
恐怖と痛みを取り除いてあげなければいけないのではないでしょうか。

このように、人と動物の同じ点・異なる点を冷静に、合理的に考えていかなくてはなりません。
何でも人と同じように考えてしまうと、動物としての本来の自然な姿や行動への理解を損ない、動物にとっては優しくない結果になることもあります。
しかし動物を心のないもののように考えてしまうと動物の痛みに気付くことができませんから、人に示す共感性のような洞察や想像力を動物に対しても示すことが求められます。
冷静・合理的というと「愛情がない」と捉えてしまう人もいますが、
愛情があるからこそ冷静に、合理的に考えるのです。
感情的になり、自分の感情や主観的な思いを犬猫などの動物に投影するのは愛情ではありません。

「無麻酔歯石除去」に話が飛びましたが、
この問題は麻酔を危険と思う飼い主側の知識や心だけでなく、
無麻酔歯石除去を行おうとする人の心理面にも大いに原因があると私は考えています。
これについては発信中のシリーズ「3. 無麻酔歯石除去の問題~心理学・キャリア心理学の面から~」で述べたいと思います。
今回の講演で戸田先生が始めの方におっしゃっていた
「トリマーの皆さんに言いたいこと」
も、おそらく最近増えている、トリマーによる歯石除去やデンタルケアについてではないかと思います。
時間がきてここまでは語られませんでしたが、どんな話がされるのかとても聞いてみたかったと思います。

時間の都合といえば、修了証の戸田先生のサインが直筆でした。
直筆サイン…このプレミア感…嬉しいですけど、受講者がたくさんいたので大変だったのではないかと心配になってしまいました(^^;)


講演時間が3時間もあると「長いなー」と思うものですが、
まるで時間の長さを感じず、楽しくて有意義な講演でした。
戸田先生、いつもためになる講演を有難うございます。
お休みの日はどうぞごゆっくりできますように。

 

 

獣医学総合誌MVMに川久保の「犬猫の歯みがき指導」掲載

2015年7月1日発売の獣医学総合誌「mvm」に、川久保が書いた
「飼い主さんに伝わる歯みがき指導」が掲載されています!

mvm156号の特集は
「犬猫の歯の健康のために」
なんと、156号と157号の2号にわたり、前編と後編での特集なのです。
まさに、犬猫の歯科やオーラルケアに関する意識とニーズが高まっている表れです。

執筆者は日本小動物歯科研究会の会長である藤田桂一先生(フジタ動物病院)、
大場茂夫先生、大風百合子先生(日本大学動物病院歯科)、
網本昭輝先生(アミカペットクリニック)、
江口徳洋先生(千村どうぶつ病院)、
幅田功先生(センターヴィル動物病院)

また、レポートとして、とだ動物病院の戸田功先生も
「飼い主に正しいデンタルケアを指導するコツ」
を書かれています。

いずれも動物歯科の第一人者という、そうそうたるメンバーです。
その中で、川久保純子(Ataraxia)が記事を書いています。

大変な栄誉です。いいんでしょうか~(;´∀`)

題は

「飼い主さんに伝わる歯みがき指導」

歯科医師としての歯科知識やTBIの経験に、
教職時代の経験、ドッグトレーナーとしての経験と知見、
さらにはカウンセラーとしての心理的な知見を交え
「歯みがき指導がどうして伝わらないか」
「そもそも、伝わっているとはどういう状態か」
「どうしたら『できる』ようになるのか」
を、インストラクショナルデザインの考え方をベースに解説しています。
犬猫の歯みがき指導をインストラクショナルデザインから解説しているのは、
おそらく本稿が初めてだと思います。

さらに!
なんと川久保の記事は、指導の方法とコツを解説した前編に加え、
「飼い主さんに伝わる歯みがき指導 実践編―歯みがき攻略の8ステップ―」
として、口に触れない動物が口を開けて歯の内側や咬み合わせ面を磨けるようになるまでも
懇切丁寧に写真付きで解説しています。

さらにさらに!!
MVM 156号に掲載されているパスワードを入力しますと
株式会社ファームプレスのMVM専用ページから
この「歯みがき攻略の8ステップ」の動画が視聴できるのです!!

この動画は、Ataraxiaの歯磨きレッスンを受講された方に差し上げている
Ataraxiaオリジナルの歯みがき解説DVDの動画の一部に加え、
MVM誌用に新たに撮り下ろしたものもあります。

MVMは獣医学の専門誌ですが
私の記事は「歯みがき指導」ということもあり、
獣医師の先生方をはじめ
歯みがき指導を現場で受け持つ可能性の高い動物看護師さんにもすんなりと読めるよう
できるだけ平易な文章で、なおかつMVMの格調高さを損なわないよう工夫したつもりです。

この記事は歯みがき指導をしたことがない、しているけれど手ごたえを感じられないという
獣医師の先生方、動物看護師の方々はもちろんのこと
一般の飼い主さんにも「犬猫の歯みがきの解説書」としても活用して頂ける内容と構成です。

Ataraxiaの歯みがきレッスンのエッセンスが惜しげもなく詰め込まれています。

蓮 「これを読めばAtaraxiaの歯みがきレッスンはいらないんじゃ…」

それはまた別の話です(^_^;)

専門誌ゆえ一般の書店やAmazon等ではお取り扱いがありませんが、
株式会社ファームプレスのサイトからオンラインでご購入できます。
http://www.pp-mvm.com/books/contents/60

ペットの歯みがきをお考えの飼い主様も、動物病院の先生方、スタッフの方々も
そのまま手引書として使える内容です。
(おっと、文章や写真、動画の流用はダメですよ^^;)

専門書なので少々お値段がはりますけれども、ぜひご一読のうえ
お手元に一冊置いて頂ければと思います。

川久保純子&蓮&MVM

美容無麻酔歯石除去、ですって!?

動物の「美容無麻酔歯石除去」なんて言葉が出てきました。

犬猫等、動物のお口の健康への意識が高まるにつれ、歯石除去のニーズも高まってきました。
一方で「無麻酔歯石除去」の問題が広がっていることは、
Ataraxiaのサイトやブログなどでも折につけお話をしています。

ところが今度は「美容無麻酔歯石除去」という言葉が出てきて驚いています。
「美容」を付けることで、これは医療行為ではないということを暗にほのめかしているようです。
色々な手口にびっくりです。
人間でも、目や眉に入れ墨を入れる行為を「アートメイク」と称し、
医師の資格を持たない人が行うことがしばしば問題となっているのに似ています。

視点を変えれば、無麻酔歯石除去の危険性や為害性が知れ渡ってきたために、
こうしたやり方で逃げ道を作り、生き残ろうとしているのかも知れません。

無麻酔歯石除去や美容無麻酔歯石除去について、
中には治療目的ではなく美容目的であると謳っている所もあり、
それはペットショップやトリミングサロン、トリマーにとどまらず、獣医師でもそのように言っている人もいます。
「麻酔をかけての歯石除去は医療目的、無麻酔での歯石除去は美容目的。これが違いです」
と説明している獣医師もいます。

歯石除去の目的が麻酔の有無で区別されるなど、そんな区切りはありません。
歯石を取れば見た目もきれいになるというだけで、歯石除去という行為は医療行為です。

そして
「どちらが良いかは飼い主さん自身が決めて下さい。」
と…。

嘆かわしいです。
飼い主さんに「自己決定」させることがインフォームドコンセントだとでもはき違えているのでしょうか。
無麻酔歯石除去が動物にとって大変危険であることはもはや自明です。
獣医師はこうしたデメリットを飼い主に正しく分かりやすく説明するのが義務です。
全身麻酔をかけることとかけないこと、歯石除去を行うことと行わないこと、
それぞれのメリットとデメリットを飼い主に説明し(もちろん分かりやすく、です)
病気がある、高齢であるなど全身麻酔の負担が大きいときは
代替案なども考えながら、飼い主が納得して治療に同意できるようにすること。
それがインフォームドコンセントです。
正しい説明もせず判断を飼い主に丸投げするような所は、何かがあったときに

「あなたが決めたことですから、あなたの責任です。」

とでも言いかねません。

また、歯磨き教室を行っているトリミングサロンやペットショップ、動物病院ならば
正しい情報をくれるような気がするかも知れませんが、そうでもありません。
犬や猫の歯みがき教室が無麻酔歯石除去の宣伝とセットになっている所が増えています。
イメージに惑わされないようにしてください。

歯石除去は目的のいかんに関わらず医療行為です。
無麻酔歯石除去によってかえって歯周病が酷くなったり
あごの骨を骨折したり口の中や目や顔などを傷つけるという事故も起きています。
意識がある状態での歯石除去は、動物の心に深い恐怖不快感をもたらします。
それがたとえ、おとなしくしていたとしても、です。

あなたの大切なパートナー、大事な犬や猫を思うなら
トリミングサロンやペットショップ等で受けないで、
正しい動物歯科の知識を持つ獣医師のもとで受けて下さいね!!