比べないで

犬のしつけについて飼い主さんとお話をしていると、よく耳にすることがあります。
それは、つい自分の犬と他の犬を比べてしまうということです。
特に子犬期からまだ若い時期の犬の飼い主さんは、こういうことが多いようです。

「お友達の犬はとても頭が良くて何でもできるのに、うちの犬は何もできなくて…」
「以前飼っていた犬は無駄吠えを全然しなかったんです。でもこのコはすぐ吠えるんです。」
「こんなに教えているのにちっとも覚えない。同じ年頃の犬はもうできるのに…」

私は歯科医や学校でのカウンセラーとして、お子様を持つ親御さんのご相談にも応じてきました。
そういった経緯もあり常々思うのですが、犬を育てるという事と子育ては本当によく似た点がたくさんあります。

子を持つ親、特に母親は、自分の子供の成長をつい同年齢の他の子と比較してしまいがちです。
そもそも人は他人と自分を比較することにより社会の中での自分の程度を推し量るものなので
自分の子供を他と比べるのも無理からぬ話ではあるのですが、 比べて、何を量っているのでしょうか?

自分の子が他の子よりも進んでいたり、優れているときは安心します。
しかしそうでない場合は、その子の未熟さや能力の低さを嘆いたり、自分の親としての至らなさを責めたりします。

さて、飼い主さんの場合はどうでしょうか。
まず、他の犬と自分の犬を比べて焦りを感じている飼い主さんは、
他の飼い主がしっかりしつけをできているにもかかわらず自分は出来ていないという、
飼い主としての至らなさや無力さを感じているという傾向が見られます。
また、「うちの犬はバカなんですよ」と言ってしまうことにより、
しつけができていないことへの言い訳をすると同時に、自分の犬への諦めを自分自身にもたらしている様子も見受けられます。

再び人への例えに戻してみましょう。

あなたは子供や学生の頃、他の子や兄弟と比較をされて嫌な思いをしたことはありませんでしたか。
怒りや、恥ずかしさや、寂しさを感じはしなかったでしょうか。

犬は他の犬と自分が比較されているということは理解できないでしょう。
しかし、飼い主さんが自分に対して抱いている不満はしっかり感じ取ります。
「もう…この子は!」
「だめだねぇ」
こんな言葉や態度は犬の自信を失わせ、悲しい思いをさせます。
トレーニングも嫌いになってしまいます。

犬のトレーニングは上手に行えば飼い主さんも犬もとても楽しいものなのです。
どうか他の犬と比べず、焦りや恥ずかしさやいら立ちを感じてもぐっとこらえて、
愛するパートナーのために表に出さないであげて下さい。
他との比較はあくまでも、おおよその程度を知る一つの目安にとどめておく方が良いでしょう。

愛犬は主人である飼い主さん、あなただけを見ています。
どうぞ飼い主さんも、目の前のパートナーに無償の愛を注いであげて下さい。